<TANNOY Rectangular York>
オーディオを生涯を通しての「趣味」として続けて行こうとの思いは強くなる一方でしたが、求める「音」の方向性が定まらずに国内製品から「JBL」や「アルティック」とアルバイトに精を出して次々と入手していきました。解決の糸口さえ見つけることが出来きずにいた頃に、イギリス製の「TANNOY」社の工場が火災で焼失したことで、今後の入手が困難になるような話を輸入商社からの連絡で知ることが出来ました。当時はパイオニアの販売促進員というアルバイトで、専門店などへ出向していましたのでいち早く情報を得ることが出来ました。この機会を逃したらばチャンスは無くなってしまうかもしれないと考え、出向していた専門店のご主人に相談して確保してもらうことが出来ました。この時は5セットほど確保して、出入りしていたお客さんにも話をして完売できたことで店の不良在庫にもならず、私自身も1セットで45万6千円也を長期間のクレジット契約にて店への支払いを済ませることが出来ました。その後にイギリス中からかき集めたと思われる製品が日本国内に輸入されたのを最後に、工場は再建されても旧製品は製造されることは無く、ロゴマークも商品構成も全く新しいデザインのものに変わっていきました。その後、輸入商社扱いからオーディオメーカーが輸入から販売を取り扱うようになって暫くすると、旧製品の一部復刻版の販売も手掛けるようになりました。
オーディオを本格的に始めてからは、当時流行っていたエアーチェックと呼ばれていた自作したカセットテープや生演奏を録音した通称「サンパチツウトラ」と呼ばれたオープンリール・テープを中心に聴いていましたが、レクタンギュラ・ヨークを手に入れてからはLPレコードを専門に聴くようになりました。以前所有していたレコードは一度処分してしまっていたために、市内にあった老舗レコード店で薦められた一枚の「Vn協奏曲」のLPを購入して毎日のように聴き込みました。暫くの間はこの一枚のレコードばかり聴いていましたので、さぞかしご近所迷惑だったことと思います。
そのLPこそが今でも私の愛聴盤である「メンデルスゾーン/チャイコフスキー・ヴァイオリン協奏曲/ミルシティン/アバド/ウィーン・フィル」で、今聴いているのは同じ録音の再販レコードですが、当時のレコードも問題なく再生することは可能ですが大切な思い出の詰まったものですから大事に仕舞ってあります。
このレコードとレクタンギュラ・ヨークの相性は抜群で、オーケストラのダイナミックさと繊細さを兼ね備えた演奏を再生するにはもってこいのスピーカーでした。巡り会えた「音」に私の求める方向性が見えだして益々オーディオにのめり込んでいきました。